Date: 1995年 11月23日(木) 11:39:15
サーチライトが夜空を照らしだす。青い帽子に黄色いジャンパーを
着た5、6名の中年男性の集団が通りすぎていく。その中のひとり
が他の人たちに説明している。
「ええ、ラオックスに二人、残りはT-ZOMEに行ってください。」
末広町の辺りからは、数百メートル先の状況がまだよくつかめない。
あちこちで道路工事が行われているだけで、それほど賑やかという
わけではない。
街がやけに明るく光っていて、徐々に歓声が聞こえてくる。
青いジャンパーの若い女の子たちが20人くらいの行列をつくって
行進してくる。手にはチラシをかかえ、「◯◯は△△の□□をヨロシク
お願いしまーす!」と声をそろえて、ねり歩く。
そのうち、T-ZONEの前にさしかかった辺りから、異様な光景が展開する。
店内にはTVの撮影隊が入っているのが外から見える。
店の前には5,60人の列が続き、あちらこちらでフラッシュが光り、
サオについた大きな集音マイクをもった報道関係者だらけ。
一夜限りのお祭りに湧いているのは、ユーザーならぬ販売店関係者と
マスコミ関係者だけのようにも思えるのだが、そうはいっても、
サクラとは思えぬユーザーたちが、しっかり列を形づくっているの
だった。(もちろん、何割かは流通関係者たちのオシゴトだろうが)
ラオックスは、もっと凄い人出だった。2ブロック先の角まで行列
ができ、店の前には、ニッポン放送の特設ブースで生放送が行われて
いた。並んでいる人たちには、甘酒が配られている。
店の入り口には、くす玉がセットされている。いよいよ、カウントダウン。
「5,4,3,2,1....パーン!パチパチパチ。。。。」11/23、午前0時。
くす玉が割れる。「祝 歴史的瞬間...」なのだそうだ。
辺りをとり囲むヤジ馬と関係者たちが、なんだかよくわからない
(理解しがたい)盛り上がりをみせている。
近くの某販売店では、30秒ほど遅れてカウントダウンが行われた。
故意の時間差なのか、たんに時計がズレていたのか?
JR秋葉原駅そばの公園には、特設ステージが設営されていた。
発電車が数台並んでいる。さすがに深夜に行われるイベントはないよう
だったが。
交差点の周囲には、警官が大勢いて交通整理にあたっている。
ひと目この歴史的瞬間(?)をみよう、と車でやってきた人たちは
駐車もできず、右折・左折もできず、そのまま昭和通りをぬけていく
ことしかできないような状況だった。
駅の近くのある店では、タイガーマスクをかぶった店員がマイクを
片手に叫んでいた。「皆様、深夜の秋葉原へようこそ!本日は、お祭り
でございます。はっきり言って原価度外視で、皆様へご提供いたします!
さあ、せっかくわざわざ秋葉原まで来たのですから、ホテル代くらいは
得してお帰りください。お安くなっております!」
ぼく達同様、帰りの電車を気にして足早にホームへ向かうネクタイ姿の
人達が大勢いた。
午前0時20分。千葉方面行きの総武線は満員だった。